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2016年12月19日 (月)

映画「ニーゼと光のアトリエ」


精神医療に、絵を描く・造形といった創作活動を取り入れた20世紀のブラジルの女性医師を題材にした作品。

精神疾患の治療に電気ショック、ロボトミー手術(脳の外科的切除)が幅を利かせていた時代。社会に適合できず心を病んだ人は精神病院に収容されていたわけだが、病院とは名ばかり、強制収容所と呼ぶのがふさわしい劣悪な環境が作品では描かれている。医療従事者による患者への暴力も横行。「どうせやつらは変わらない」という絶望が支配している荒み切った院内だ。

そんな中赴任したニーゼ医師は、患者ではなく顧客(クライアント)と呼びなさい、と看護師に指示。廃墟同然の作業室を整理し、クライアントが創作活動を行うためのアトリエにするのだ。庭では犬も飼うようにした。クライアントは筆を持ち、粘土に向き合うようになる。暴力的だったり、生気を失ったりしていたクライアントに人間らしい豊かな表情が戻ってきた。このように創作活動は、彼ら彼女らの中にあった「自ら回復しようとする力」を引き出したのであった。

芸術療法と呼ばれるこの取り組みは行動療法の先駆けだったようだ。海外では、精神疾患を得た人を支援しながら地域に包摂することが普及しているようだが、日本では1年以上も精神病院に入院しているひとが20万人もいるという。「社会的入院」という措置だ。

経済や効率に貢献できない人は脱落者として排除する。そういう論理は、日本社会で徹底している。それは精神医療でもそうで、容赦なく切り捨てられる。なんと冷たいことだろう。だが、その矛先は常に私たちにも向けられていて、社会の仕組みを疑うこともせず、脱落することを恐れて必死でしがみついている。

しかしそうしなくても社会を作ることはできる、というほのかな希望を感じさせる作品だ。17日から公開中。

■映画公式サイト
http://maru-movie.com/nise.html

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